ザラフィアンツのピアノを聴く... |
ふと耳にしたショパンの一曲に非常に心打たれたことがあった。
ピアニストの名はエフゲニー・ザラフィアンツという。
その時は全く知らないピアニストだったのだが、彼の音の繊細さは生でなくても十分に伝わってくるものだった。そして、彼の弾くピアノの音々には、憂いを感じた。
なぜこんなにも哀しい音になるのだろう?音そのものが哀愁を帯びているのだ。
◆Chopin Nocturne No.20 in C sharp minor op.potsh
Piano: Evgeny Zarafiants
色々調べて、ザラフィアンツは時折日本で公開レッスンや演奏をしていることを知った。
地味ながら芸術家らしいアプローチは活動を見るだけでも明らかだが、機会を得て初めて彼の音楽を聴くことが出来た。(彼の活動をサポートする組織があるようだ)
《エフゲニー・ザラフィアンツ ピアノリサイタル》
2011年12月12日 (月) 19時 東京文化会館小ホール
○シューマン : 蝶々 op.2、森の情景 op.82
○ショパン:ポロネーズ第7番 変イ長調「幻想ポロネーズ」op.61
○ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調「英雄」op.53
○リスト:ソナタ ロ短調
全席自由:一般5500円 学生3000円
○アンコール:ショパン「ポロネーズ第10番」
モシュコフスキー「愛のワルツ」
ppp(ピアニッシシモ)のような超弱音?に今まで聴いたことのなかった美しさが燻し銀のような輝きを放っているのだ。けっして華やかではない、かといって暗いのでもなく、様々な人生経験を経てこそ醸し出される憂いを帯びた輝きとでも言おうか、大人の音、本物の音楽を創るピアニストなのだ。
メインプログラムはリストのロ短調。
シューマンやショパンはその導入のようだった。
作品をあそこまで掘り起こし、とことん突詰め自分の音楽にし、高めているのには驚嘆。テクニックだけで到底辿り着けない、本物の音楽を目ざす者だけに与えられた音楽創りと言えばいいのだろうか?凄まじい集中力と精神力でリストの音楽を創りあげた。彼は心底からリストの音楽に入り込み、寄り添い、自分と同化しているかのように感じた。
彼は音楽創りにしても,ピアノの音にしても、とても個性のあるピアニストで、(はっきり言って)たぶんメジャーにはならないだろうけれど、非凡なる才能の持ち主であることは間違いない。特に、弱音の美しさ、繊細さには脱帽。小さい音のなんと豊かなことか...。
残念だったのは私自身がリストの音楽をほとんど理解できていないことだった。彼のお陰でまた世界が広がった気がしている。
アンコールは素晴らしい選曲で納得。最後の「愛のワルツ」で心穏やかに会場を後に出来た。彼のようなピアニストこそ本物なのだろうと思うし、チャンスがあれば是非また聴きたいと思う。
ご興味があれば、今回のリサイタルに向けたインタヴュー映像を。
な、なんと!日本語で話されます。彼の人柄がよく分かります。
音楽会で彼がニコリとすることはほとんどなかったので貴重です。(^^
◆インタヴュー映像/E.ザラフィアンツ リサイタルにむけて!
ただ、ショパンはコラージュでは表現しきれないと・・・。あえて、断片の美は排除するピアニスト達がいます。
私も是非、生の演奏を聴いてみたいと思いました。
こんばんは。素直な感想を伺って、、、なるほどと唸りました。
ピアニストの表現のことについても...。
音楽を創ることの難しさを越えて、様々な表現方法の中から自分でなければ出来ない「何か」を見出せたアーティストは幸せなのだと思います。
菜緒さんには是非一度生を聴いてみてほしいピアニストです。ライブでしか味わえないモノを持つピアニストだと思いました。なかなか考えさせられる演奏会でした。
今回のプログラムは後半だけで十分だと思えるくらい...彼の音楽には様々な評価があるでしょうが、タダモノではないと思いました。
コメント有難うございました。<(_ _)>