モンテカルロバレエ団 「LAC〜白鳥の湖」へ |
photo:Angela Sterling
photo:Alice Blangero
photo:Laurent Philippe
昨日、「LAC〜白鳥の湖」最終日の公演を観てきた。
音楽はチャイコフスキーだが、全編を通じて既成のバレエに捕われない斬新さ。
振付、舞台、衣装、照明に至ってもシンプルながら非常に洗練されている。
クラシックから言えば、とても突飛で滑稽に見えるアプローチ(振付)であっても、マイヨーの目差した表現は、目に見えるモノ(衣装や踊りそのもの)をやすやすと越えて、人間の持つ哀しみやどうしようも出来ない性(さが)を「白鳥の湖」というバレエを通して表現したのではないかと感じた。
また人間の持つ二面性、光と影、善と悪、、、、。相反するものを存しながら生きねばならぬジレンマ。
今回この舞台を見ながら脳裏に浮かんだのは、ニュースを賑わす悲しい出来事のアレコレ。本当に色々なモノを思い浮かばせ感じさせられたひと時であった。(まさにリアルタイムな悲劇を想起させられた気がしている。)
一幕が開いてすぐに、舞台からどうしようもない哀しみを感じて苦しかった。
カラフルな衣装で踊る王妃や狩人たちを見ても、振付けの面白さに目が行くというより何故か切なさの方が勝った。
マイヨー版では悪魔ロットバルトではなく「夜の女王」が登場するのだが、その娘「黒鳥」も最後には王妃の怒りをかい、夜の女王さえも娘を亡くす?悲劇に苦しむことになる。
誰ひとりもハッピーエンドをむかえることが出来ず、心に深い苦しみを抱えて舞台の幕が下がった。
不覚にも三幕はほぼ涙が頬を伝っている状態であった。
白鳥が可哀相というだけでなく、王子も、黒鳥も、もちろん王妃も夜の女王も皆が哀れで泣けてきた。踊りきったダンサー達に拍手しながら、現実の世界に戻るまで少し時間を要した。
バレエの舞台はもちろん踊りの美しさや形を見て楽しむ部分はとても大きい。
けれど、決してそれだけではないことを再認識させられる舞台だった。
踊りという肉体表現を通じて人間そのものを見せられているのだ。
喜びも悲しみも強さも弱さも、全ては我々、人間そのものなのだ。
音楽や美術もそうだが、バレエやダンスもまたそのことを現している部分が大きい。
そして、それこそが表現することの面白さであり目差すものなのではなかろうかと思う。
それにしてもマイヨーの才能には凄いものを感じる。
(まだまだ鑑賞力も拙い)前回(二年前)に見た「シンデレラ」はとても好きな作品だったし、今回もまた良い作品に出会えて非常に幸せだった。
小池ミモザ(王妃)の存在感の大きさに改めて脱帽したが、出来れば引退するコピエテルスの踊りを観てみたかった。(前回来日公演の際、客席でオーラ輝く美しいご本人を見たことはある。LACはテレビ放映されたので映像では彼女の踊りを見ているが、、、残念。)
ダンサーたちは様々な国籍の精鋭揃いで、皆非常に切れがありつつ柔軟性に長けたダンスで魅了させられた。日々の鍛錬の賜物だろう。
以上、個人的感想記。
観賞記念に動画を掲載。
◆LAC - Les Ballets de Monte-Carlo
追記:こんなのがありました。備忘録として。
ジャン・クリストフ=マイヨーが語る「LAC~白鳥の湖」
モンテカルロ・バレエ団「LAC〜白鳥の湖」プレトーク
モナコ公国モンテカルロ・バレエ団「LAC〜白鳥の湖」
振付:ジャン=クリストフ・マイヨー
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
装置:エルネスト・ピニョン=エルネスト
衣装:フィリップ・ギヨテル
照明:ジャン=クリストフ・マイヨー、サミュエル・テリー
ドラマトゥルギー:ジャン・ルオー
追加音楽:ベルトラン・マイヨー
◇2015年3月1日(日)のキャスト
王:ガブリエレ・コッラオード
王妃:小池ミモザ
夜の女王:エイプリル・バール
王子:ルシアン・ポスルウェイト
白鳥:アンハラ・バジェステロス
黒鳥:ノエラニ・パンタスティコ
王子の友人(相談役):アシエル・エデソ
闇の大天使:クリスティアン・ツヴァルジャンスキー、ブルーノ・ロケ
[欺くものたち]
虚栄心の強い女:キャンデラ・エッベセン
偽りの無関心を装う女:アレッサンドラ・トノローニ
放埓な女たち:フランセス・マーフィ、田島香緒理
貪欲な女:ガエル・リウ
狩人たち:
ルーカス・スリーフット、エドアルド・ボリアニ、コーエン・ハヴェニス、
オレリアン・アルベルジュ、ヨアキム・アデベリ、リー・ワン、
ダニエレ・デルヴェッキ、エドガル・カスティロ、ステファノ・デ・アンジェリス
その友人たち:
エレーナ・マルザーノ、アンナ・ブラックウェル、サラ・クラーク、
イー・スン、アンヌ=ロール・セイラン
キマイラたち(白鳥):
シヴァン・ブリツォワ、フランチェスカ・ドルチ、ティファニー・パチェコ
エレーナ・マルザーノ、フランセス・マーフィ、
田島香緒理、ベアトリス・ウァルテ、ガエル・リウ、
リイサ・ハマライネン、アンヌ=ラウラ・セイラン、イー・スン、
キャンデラ・エッベセン、アンナ・ブラックウェル
宮廷:
田島香緒理、エレーナ・マルザーノ、キャンデラ・エッベセン、
クイン・ペンデルトン、フランセス・マーフィ、イー・スン、
サラ・クラーク、アレッサンドラ・トノローニ
ティファニー・パチェコ
リー・ワン、ヨアキム・アデベリ、ルーカス・スリーフット、
ステファノ・デ・アンジェリス、オレリアン・アルベルジュ、エドガル・カスティロ、
ダニエレ・デルヴェッキオ、コーエン・ハヴェニス、エドアルド・ボリアニ
◆上演時間◆
第1幕 14:00〜14:50
休憩 20分
第2幕 (転換) 第3幕、第4幕 15:10〜16:00
ミモザさんの踊り、すばらしかったのではと。
マイヨーの振付のボキャブラリが持っている感情表現の幅広さ、奥行きの深さには驚かされます。
こんばんは。コメント有難うございます。
非常に感銘を受けた公演でした。
個々のダンサーの技の確かさはもちろんですが、上に書いた通り、マイヨーの正しく語彙の豊富さ、深さ、質の高さが際立って素晴らしかったです。
ミモザさんは何の不安感もなく見事に王妃を踊りきりました。(^^